第30回「おかやまじっく」決勝戦: Shouta Fujii(岡山) vs. Yuma Shiota(岡山)

今回で30回という、一つの節目を迎える事となった「おかやまじっく」。大台の突入となり、3周年も目前となった。

多難を乗り越え、勝利を手にしつつ決勝戦に駒を進めたのはこの二人。

フジイ ショウタとシオタ ユウマである。

フジイは過去におかやまじっく優勝経験もある試合巧者《ゲーム・メイカー》。冷静なポーカーフェイスの下に、熱いマジックへの情熱を感じさせるプレイヤー。

対するシオタ ユウマは2009年の日本選手権3位、世界選手権出場と華々しい経歴を持つポテンシャルの高いプレイヤー。

『3位決定戦:塩田 有真(岡山) vs. 津村 健志(広島)』http://archive.mtg-jp.com/eventc/jpnats09/article/000875/

フジイは現スタンダードの環境初期から禁止改定を経てパワーダウンを余儀なくされたにも関わらず使い続け、文字通り信頼のおける「相棒」である赤単を駆り勝利を狙う。

一方、対するシオタのデッキは異彩を放ち、会場でも話題になっていたデッキ。プレイをする前から対戦相手を疑心暗鬼にさせていた。

シオタのデッキは…スリーブに「入っていない」のだ!!(土地をはじめとして、全てのカードに新品を使用し、見た目等にてカードの判別ができないことはジャッジが確認済み)

シールドデッキと見紛うような「裸のデッキ」はシオタ曰く、驚愕の5,00円。スタンダードの構築としては破格だ。

さる2月某日に開催された、岡山は西大寺で開催される日本三大奇祭の西大寺会陽…またの名を「裸祭」。ふんどし一丁で宝木を取り合う熱い侠気のようなデッキと言えるだろう。

大会開催前から困惑を覚える私をあざ笑うかのように、シオタは容赦なく、妥協なく、躊躇いなく、無慈悲に対戦相手を圧倒していったのだ。そしてシオタが難なく予選を突破する様を目の当たりにし、困惑は確信に変わった。

…このデッキは『本物』だ!!

両者は奇しくも予選ラウンド最終戦である5回戦目に対戦済み。その際にはシオタがストレートで2-0にてフジイを下しているのである。

おかやまじっくはカジュアル志向の強い大会として認知されているが、決勝トーナメントの最終戦ともなると一定の緊張感が漂うのが通例である。

フジイ、シオタの両名が印象的なのは両者ともに、勝っても負けても本当にマジックを楽しそうにプレイすることだ。

相対して座すれば、勝負を決してしまうのが対戦ゲームの常であるが、ゲームの本質は「楽しさ」であることを再確認させてくれる二人が、今、穏やかにゲームを始めようとしていた。

前置きが長くなってしまった。第30回おかやまじっくの決勝戦に集中しようではないか。

Game1

まさに怒涛の展開であった。

フジイが《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》、《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》とシオタに息をつかせない圧倒的なブン回りを披露する!

シオタも今日一日を共に戦った《苦刃の戦士/Bitterblade Warrior(AKH)》、《ネフ一門の鉄球戦士/Nef-Crop Entangler(AKH)》と戦線を横広げ、乾坤一擲を見舞う機会を伺う。しかし表情が曇るシオタの脳裏に浮かぶのは、予選ラウンド最終戦。手の内をフジイに知られてしまっている事に渋面を隠せない。

対戦相手を一閃で葬ってきた、督励クリチャーアタック→《暴力の激励/Invigorated Rampage(AER)》+《投げ飛ばし/Fling(AKH)》の必殺コンボがーーー間に合わなかった。

フジイ Win!

フジイ 1 – 0 シオタ

シオタ「火力や軽量除去をしっかり取ってあるデッキは無理(笑)」

嘯くシオタを見つめるフジイの視線は油断を感じない。そう、一瞬でも気を抜くことが即ち敗北につながる事を知っているのである。

Game2

フジイが1ターン目に展開した《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》を、シオタが《マグマのしぶき/Magma Spray(AKH)》を打ち込む戦いの幕開け。

シオタは緑マナを引き込むことができず、若干の足踏みをしてしまう。

対するフジイは《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand(RIX)》で静かにアタックをするのみ。手札には軽量火力が満載されている気配。徹底的にシオタのクリーチャーを焼き尽くす作戦のようだ。

シオタは《進化する未開地/Evolving Wilds(RIX)》により、待望の緑マナを確保。《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》で反撃を開始する。

シオタの懸命さをあざ笑うかのように、フジイが場に出した4マナのカードが戦局を一気に傾けた。

《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》である。

このプレインズウォーカー1枚で、シオタのデッキが7個買えてしまう!!チャンドラが高いのか、シオタのデッキが安いのか。突如として現れた疑問に目眩を覚えながらも、この一戦からは目が離せない。

フジイは《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》のプラス能力を使用。忠誠値をひとつ上げ「5」にしながら、赤マナを2つをを生み出す。その2マナで《稲妻の一撃/Lightning Strike(XLN)》をプレイし、《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》を退場させた。シオタが渇望する逆転の目を根こそぎ奪う動きである。

シオタは再び《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》を戦場に呼び出し、フジイのチャンドラに対して突っ込ませるも、パワー不足でチャンドラを撃墜することは叶わない。

そして生き残ったチャンドラの第2の小プラス能力がフジイにもたらしたのは、《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》!!

勢い良くフルアタックを宣言したことにより、シオタのライフが7となる。

後がないシオタ、押し込みたいフジイ。

返しのターンで持てる戦力を全て注ぎ込み、チャンドラを打ち倒したシオタが「かかって来い」と言わんばかりに力強くターン終了を宣言。

ターンを獲得したフジイがデッキから引き込んだカード、そこには『彼女』の姿が…………(笑)

両者、どちらからともなく笑みがこぼれた。

シオタは勝者となったフジイに『ありがとうございました』と互いに健闘を称えたのであった。

フジイ Win!

フジイ 2 – 0 シオタ

「第30回おかやまじっく」の優勝はフジイ ショウタ!!
おめでとうございます!!

フジイ ショウタ 使用デッキ『赤単』
https://pbs.twimg.com/media/DW3XuCUVAAALT7-.jpg

シオタ ユウマ 使用デッキ『督励JAPAN』
https://pbs.twimg.com/media/DW3WF64VMAATGyv.jpg